監修:歯科医師 濱本 靖也(HALO DENTAL CLINIC 院長)
「神経を抜きましょう」と言われて、すぐには受け入れられないという方は多くいらっしゃいます。
抜く必要がある状態は、学会のガイドラインで定められています。
そして、よく言われる「神経を抜くと栄養が届かなくなり、枯れ木のように脆くなる」という説明は、実際に測った研究と照らすと力点がずれています。
歯を弱くしている主な要因は、神経を取ったことよりも、歯をどれだけ削ったかでした。
この記事でわかること
- 抜く必要がある状態と、残せる可能性がある状態
- 抜いた歯が弱くなる本当の理由(実測データつき)
- 「何年もつのか」への正直な答え
そもそも「神経を抜く」とは何をすることか
一般に「歯の神経」と呼ばれている部分は、正式には歯髄(しずい)といいます。
何を取り除くことになるのかを、先に押さえておきます。
日本歯科医師会は、歯の構造をこう説明しています。
歯の中央部には血管が侵入している「歯髄」があります。
歯の本体は「象牙質」と呼ばれる組織です。
出典:歯と歯ぐきと歯を支える骨の構造(日本歯科医師会「テーマパーク8020」)
歯髄は神経線維だけでできているわけではなく、血管も通っています。
そのため、痛みや温度を感じ取るだけでなく、歯の内部に栄養を運ぶ役割も担っています。
この歯髄を取り除く処置を、抜髄(ばつずい)といいます。
「神経を抜く」と言われているのはこの処置です。
なお、すでに歯髄が死んでしまっている場合に行う処置は感染根管治療と呼ばれ、抜髄とは区別されます。
どちらも根管治療の一種です。
抜く必要がある状態は、定められています
「感染の程度によって判断します」という説明を受けることがありますが、もう少し具体的な基準があります。
日本歯内療法学会の「歯内療法ガイドライン」は、永久歯で神経を取る治療が適応となる条件を挙げています。
全部で8項目あり、その最初の2つが次のものです。
1)不可逆性歯髄炎。
2)根尖病変の有無にかかわらず、歯髄壊死。
出典:歯内療法ガイドライン(日本歯内療法学会)
虫歯が原因で「神経を抜きましょう」と言われる場合、ほとんどはこのどちらかに当てはまります。
不可逆性歯髄炎とは
「元に戻らない段階まで進んだ、歯髄の炎症」という意味です。
歯髄の炎症には段階があります。
初期であれば、虫歯を取り除いて適切に処置すれば、炎症が落ち着いて元の状態に戻ることがあります。
これを可逆性(かぎゃくせい)といいます。
しかし炎症が進むと、原因を取り除いても歯髄が回復しなくなります。
この段階が不可逆性歯髄炎です。
今どのような痛みがあるかを、まず確認してみてください。
| 症状 | 考えられる状態 |
|---|---|
| 冷たいものが一瞬しみるが、すぐ治まる | 初期の段階。神経を残せる可能性がある |
| 何もしなくてもズキズキ痛む(自発痛) | 不可逆性歯髄炎が疑われる |
| 温かいもので強く痛む | 同上 |
| 夜間や横になったときに痛みが強くなる | 同上 |
| 痛みで眠れない | 同上 |
| 痛みが自然に消えた | 治ったとは限らない。 歯髄壊死の可能性がある |
この表は目安です。
症状だけで確定するものではなく、実際の診断はレントゲンや歯髄の反応を調べる検査を含めて行われます。
歯髄壊死とは
歯髄が死んでしまった状態です。
注意していただきたいのは、この段階では痛みが消えることがあるという点です。
「痛かったのに、いつのまにか治まった」という経過をたどった方は少なくありません。
しかし、痛みが消えたのは治ったからではなく、痛みを感じる組織が働かなくなったからである可能性があります。
この状態を放置すると、根の中で細菌が増え、根の先の周りに炎症が広がります。
歯ぐきが腫れる、膿が出る、といった症状が出てくるのはこの段階です。
痛みが消えたことを理由に受診をやめないでください。
歯の神経を残せる可能性がある状態
一方で、条件を満たす場合には神経を残す治療が選択肢になります。
同じガイドラインは、露出した歯髄を保護する処置(直接覆髄)について、次の条件を挙げています。
1)臨床的に生活歯髄で無症状な歯髄が露髄した場合。
2)露髄面にて出血がコントロールされている。
3)露髄面で覆髄材を歯髄組織に直接接触できる。
4)露髄面での細菌汚染が最小限である
5)適切な歯冠側の封鎖が維持される。
出典:歯内療法ガイドライン(日本歯内療法学会)
注目していただきたいのは、1つめの「無症状な歯髄」という条件です。
すでに何もしなくてもズキズキ痛んでいる状態は、この条件から外れます。
つまり、痛みが強くなってからでは、残せる可能性は下がります。
「そのうち歯医者に行こう」と先延ばしにするあいだに、選択肢が減っていくということです。
神経を残す治療をしても必ず残せるとは限らない
同じガイドラインは、この処置について患者への説明が必要であることも定めています。
歯内療法が代替治療法として存在し、不測の場合には歯内療法を行わねばならないこと、そして直接覆髄によって今後の歯内療法の可能性を未然に防げるかもしれないことを患者によく説明しなければならない。
出典:歯内療法ガイドライン(日本歯内療法学会)
うまくいかなかった場合には、改めて神経を取る治療が必要になる。
これは処置を受ける前に説明されるべきことです。
神経を残す処置は、ひとつではありません
ここまで「直接覆髄」を例に説明してきましたが、神経を残す処置はこれだけではありません。
歯髄温存療法(VPT)と呼ばれる処置には、大きく次の2つの考え方があります。
| 処置 | 何をするか |
|---|---|
| 覆髄治療(直接・間接) | 歯髄を取り除かずに、上から覆って保護する |
| 断髄治療 | 歯髄の上部だけを取り除き、根の中の歯髄を残す |
当院ではいずれも行っており、感染の広がり方によって選択しています。
断髄治療は、感染が歯髄の一部分に限局していると判断した場合に選ばれます。
断髄について、評価には幅があります
断髄については、国内と国外で位置づけに差があります。
ここは正直にお伝えします。
日本歯内療法学会のガイドラインでは、永久歯の断髄は
「応急処置」「未完成の歯根が完成するまでの暫間的処置」として位置づけられています。
一方、国外では成績を報告した研究が複数あります。
う蝕による露髄を対象に25件のランダム化比較試験(2,085歯)を統合した報告では、
成熟永久歯での成功率は83.8%、不可逆性歯髄炎に限ると82.4%とされています。
出典:Li W, Yang B, Shi J. PLoS One. 2024;19(7):e0305218.
根管治療と直接比べたランダム化比較試験(成熟臼歯160例・1年)でも、
成功率は断髄 97.3%、根管治療 98.6% で、統計的な差は認められませんでした。
出典:Zhu L, et al. BMC Oral Health. 2024.
ただし、これで決着がついたわけではありません。
2025年に公表された総括的な報告は、追跡期間が1〜2年と短いことなどを挙げ、
「現時点のエビデンスは確定的に推奨するには不十分であり、慎重に選んだ症例に限って検討されるべき」
としています。
出典:Chhabra A, et al. Science Progress. 2025;108(2).
当院が断髄の適応を限定しているのは、この考え方によるものです。
成績は良好に報告されている一方で、評価が定まりきっていない。
だから、症例を選んで行う。
——これが現時点での立場です。
なお、神経を残せないと判断された場合や、処置後に症状が出た場合には、改めて神経を取る治療が必要になります。
適応となるかどうかは、歯の状態を診たうえでの判断になります。
詳しくは歯をできるだけ長く残す治療をご覧ください。
「神経を抜くと脆くなる」の本当のところ
ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。

「神経を抜くと歯が脆くなる」とよく言われる理由
歯科医院のサイトや解説記事では、「歯髄には血管が通っていて栄養と水分を供給しているので、神経を抜くと栄養が届かなくなり、歯は枯れ木のように脆くなる」という説明をよく見かけます。
直感的に分かりやすい説明です。
実際、神経を取った歯が割れてしまうことは臨床上あります。
ただし、「栄養が届かないから脆くなる」という理屈が正しいかどうかは、別の話です。
神経を抜いた歯は本当に脆くなるのか|実際に測った2つの研究
1つめは、神経を取った歯と、同じ人の反対側にある生きた歯を比べた研究です。
23本の歯を、神経を取ってから平均10.1年が経過した時点で比較しました。
出典:Sedgley CM, Messer HH. Are endodontically treated teeth more brittle? J Endod. 1992;18(7):332-5.
結論は、神経を取った歯と、反対側の生きた歯とで、力学的な性質はほとんど変わらなかったというものでした。
研究者は「歯は根管治療のあとにもろくなるわけではない」「歯が割れる原因は、別のところにある」と述べています。
割れにくさ、粘り強さ、折れるまでにかけられる力。
いずれも差はありませんでした。
差が出たのは歯の内側の層(象牙質)の硬さだけで、その差は3.5%でした。
2つめは、その「他の要因」が何かを調べた研究です。
抜いた歯42本を使い、処置を1段階ずつ進めながら、歯のたわみにくさを測っています。
数値にすると、次のようになります。
| 行った処置 | 歯のたわみにくさの低下 |
|---|---|
| 根管治療そのもの(歯に穴を開け、根の中を清掃し、詰める) | 5% |
| 噛む面を削って詰め物のための形を作る | 20% |
| 両隣の縁まで削る形(MOD窩洞)を作る | 63% |
根管治療そのものによる低下は5%です。
それに対し、歯を削って両隣の縁を失うと63%まで落ちます。
つまり歯を弱くしている主な要因は、神経を取ったことではなく、歯を削って失ったことです。
この2つの研究の限界
この2つの研究は、いずれも抜いた歯を実験室で測ったものです。
口の中で実際に何年もつのか、何%の歯が割れるのかを直接調べたものではありません。
噛む力のかかり方、歯ぎしり、被せ物の適合といった条件は、実験室では再現しきれません。
したがって、「神経を抜いても脆くなりません」と言い切ることはできません。
神経を取った歯が割れることは実際にあります。
ここで言えるのは、「脆くなる原因を、神経を取ったこと『だけ』に帰するのは正確ではない」ということです。
歯を弱くするのは神経を抜くことより「削る量」
この2つの研究が示しているのは、判断の軸をずらすべきだということです。
「抜くか抜かないか」だけでなく、「どれだけ歯を残せるか」が同じくらい重要です。
- 神経を残せたとしても、大きく削っていれば歯は弱くなります
- 神経を取ったとしても、削る量を最小限に抑えられていれば、その分は有利です
だからこそ、根の中を正確に把握して必要な範囲だけ処置すること、土台や詰め物で歯を削りすぎないことが、歯の寿命に関わってきます。
当院が拡大視野での処置や、削る量を抑えた修復(ダイレクトボンディング、ファイバーコアなど)を重視しているのは、この考え方によります。
神経を抜いた歯は何年もつのか

「神経を抜くと歯は何年もちますか」というご質問をよくいただきます。
正直に申し上げると、年数をお約束できるデータを、この記事では示せません。
「10年」「15年」といった数字を見かけることがありますが、その根拠となる調査を確認できませんでした。確認できない数字を書くわけにはいきません。
代わりに、何がその歯の寿命を左右するのかはお伝えできます。
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| 残っている歯の量 | 先ほどの研究のとおり、これが最も大きく効きます。削る量が少ないほど有利です |
| 被せ物・土台の適合 | すき間があると、そこから細菌が入ります。再感染は再治療の主な原因です |
| 噛む力・歯ぎしり | 特定の歯に強い力がかかり続けると、破折の危険が高まります |
| 再感染を防げているか | 治療中も治療後も、根の中に細菌を入れないことが重要です |
| 定期的に確認しているか | 神経を取った歯は痛みを感じにくいため、異変に自分で気づけません |
歯の寿命は根管治療の質だけでなく被せ物の質でも決まる

この点について、よく引用される研究があります。米国テンプル大学歯学部で、根管治療を受けて修復まで終わった歯1,010本のレントゲン写真を評価したものです。
根管に詰めた材料の質と、その上にかぶせた被せ物・詰め物の質を、それぞれ「良い」「悪い」に分けて、根の先の周りに炎症があるかどうかを調べています。
結果は、次のとおりでした。
| 組み合わせ | 根の先の周りに炎症がなかった割合 |
|---|---|
| 根管充填の質が良い + 被せ物の質が良い | 91.4% |
| 根管充填の質が悪い + 被せ物の質が悪い | 18.1% |
| (全体の平均) | 61.07% |
さらに注目すべきなのは、次の点です。
被せ物の質が良かった歯(80%)のほうが、根管充填の質が良かった歯(75.7%)よりも、炎症のない割合が高かったという結果でした。
つまり、根の中の治療だけが良ければよいわけではありません。
その上に何をかぶせるか、それがきちんと合っているかも、同じくらい効いてきます。
このデータが「自費と保険の差」と誤って紹介されること
このデータは日本の歯科医院のサイトで、「自費の根管治療+自費の被せ物なら91.4%、保険の根管治療+保険の被せ物なら18.1%」という形で紹介されていることがあります。
その説明は、この論文の内容とは異なります。
この研究が比べているのは、自費か保険かではなく、根管充填と被せ物の技術的な質です。
米国で行われた研究であり、日本の保険制度の話は出てきません。
保険診療と自由診療では使える材料や時間に差があるのは事実ですが、この論文はそれを示したものではありません。
数字を見かけたときは、何と何を比べたデータなのかを確認してください。
20代・10代で神経を抜くことについて
「20代で神経を抜くのは早すぎるのでは」と検索されている方がいます。若いほど、その歯を使う年数は長くなります。
だからこそ、削る量を抑えることの価値が大きくなります。ただしこれは「若いから抜いてはいけない」という意味ではありません。
不可逆性歯髄炎や歯髄壊死の状態を放置すれば、根の先に炎症が広がり、最終的に歯を失うことにつながります。
若い方ほど、早い段階で受診して選択肢を確保することが重要です。
神経を残せないと言われたら
診査の結果、すでに炎症が全体に広がっていて神経を残せないと判断されることがあります。そう言われたときに、落胆する必要はありません。神経を取る治療は、歯を失わないために行う処置です。
そして、先ほどのRay・Tropeの研究が示すとおり、その後の経過を左右するのは「根管の中をどれだけ確実に清掃・封鎖できたか」と「その上の被せ物が合っているか」です。
そのために重視されるのが、次の3点です。
| 重視されること | 理由 |
|---|---|
| 根管に細菌を入れないこと | 学会のガイドラインが、ラバーダム防湿下での無菌的処置を求めています |
| 根管の形と本数を正確に把握すること | 見落とされた根管が残ると、そこが感染源になります |
| 削る量を最小限にすること | 実測データのとおり、削って失った量が歯の強さに最も効きます |
当院の精密根管治療は、この考え方に沿って行っています。なお、精密根管治療を行っても、再治療が必要になる場合や、最終的に歯を残せない場合があります。
歯の状態、根の形、すでに失われている歯の量によって見通しは変わります。
抜いたあとに起きること
神経を取ったあと、歯には次のような変化が起こります。
神経を抜いた歯は痛みを感じなくなる
これは利点でもあり、注意点でもあります。
歯の中に痛みを感じる組織がなくなるため、虫歯が再発しても気づきにくくなります。
「痛くないから大丈夫」という判断ができなくなる、ということです。これが実質的にいちばん大きなデメリットです。定期的な確認が必要になるのは、このためです。
なお、歯の周りの組織(歯根膜)には感覚が残っているので、噛んだときの違和感や、根の先に炎症が起きたときの痛みは感じます。
神経を抜いた歯は変色することがある
神経を取った歯は、時間の経過とともに色が暗くなることがあります。前歯の場合、見た目に影響することがあります。
程度には個人差があり、必ず変色するわけではありません。気になる場合の対応方法もあります。
神経を抜いたあとは被せ物と土台が必要になる
神経を取ると、歯に穴を開けた状態になります。そのままにはできないため、詰め物や被せ物で修復します。
大きく失われている場合は、被せ物を支えるための土台(コア)を入れます。土台の材料によって、歯にかかる負担が変わります。
「歯が死ぬ」という表現を見かけますが、この記事では使いません。歯の周りの組織は生きており、歯としての機能も残ります。正確な言い方ではありません。
歯の神経を抜く治療の流れと通院回数
おおまかな流れは次のとおりです。
- 麻酔をする
- 虫歯を取り除き、歯髄に到達する道を作る
- 歯髄を取り除く
- 根管の中を清掃し、形を整える
- 消毒する(複数回に分かれることがあります)
- 根管に材料を詰める(根管充填)
- 土台を入れ、被せ物をする
通院回数は、根管の本数、感染の程度、根の形の複雑さによって変わります。
前歯より奥歯のほうが根管の数が多く、回数がかかる傾向があります。治療中に重要なのが、根管に唾液や細菌を入れないことです。
日本歯内療法学会のガイドラインは次のように定めています。
全ての根管の清掃・形成・消毒・閉鎖は、常にラバーダム防湿下で無菌的処置下で行われるべきである。
出典:歯内療法ガイドライン(日本歯内療法学会)
なお、治療中の痛みや「麻酔は効くのか」という不安については、別の記事で詳しく扱っています。
麻酔が効きにくいときに何が行われるか、追加の麻酔がどのくらいの割合で必要になっているかまで、数値を挙げて説明しています。
治療後の痛みがいつまで続くかについても、別の記事で日数ごとの目安をまとめています。
神経を抜くか迷ったときにできること
「本当に抜くしかないのか」と迷ったとき、まずは担当の歯科医師に聞いてください。
実際にレントゲンを見て、歯の状態を確認しているのは担当の歯科医師です。
次の質問をすると、判断の材料が得られます。
| 質問 | なぜ聞く価値があるか |
|---|---|
| 「今、歯髄はどういう状態ですか」 | 不可逆性歯髄炎なのか、まだ判断がつかない段階なのかが分かります |
| 「神経を残せる可能性はありますか」 | 残せる条件を満たすかどうかを確認できます |
| 「どのくらい削ることになりますか」 | 歯の寿命に最も影響する部分です |
| 「今すぐ処置しないと、どうなりますか」 | 緊急性が分かります。急ぐべきかどうかの判断材料になります |
| 「治療は何回くらいかかりますか」 | 予定が立てられます |
「放置する」は選択肢になりません。
不可逆性歯髄炎や歯髄壊死をそのままにすると、根の先の周りに炎症が広がり、状況は悪くなる方向にしか進みません。
痛みが消えても同じです。
よくある質問
Q1. 神経を抜くと歯は何年もちますか?
年数をお約束できるデータはありません。残っている歯の量、被せ物の適合、噛む力、再感染の有無などによって大きく変わります。特に「どれだけ削らずに済んだか」が影響します。
Q2. 痛みがなくなったのですが、放っておいてよいですか?
いいえ。痛みが消えたのは、歯髄が死んでしまった可能性があります。放置すると根の先に炎症が広がります。必ず受診してください。
Q3. 20代で神経を抜くのは早すぎませんか?
使う年数が長い分、削る量を抑えることの価値は大きくなります。ただし、必要な処置を先延ばしにすれば選択肢は減ります。早めに相談することをおすすめします。
Q4. 神経を抜いた歯は変色しますか?
時間の経過とともに色が暗くなることがあります。程度には個人差があり、必ず変色するわけではありません。気になる場合は対応方法があります。
Q5. 神経を残す治療は、どの歯にもできますか?
いいえ。学会のガイドラインは条件を定めており、その1つに「無症状な歯髄」があります。すでに強く痛んでいる状態では条件から外れます。
費用について
自由診療で行う処置の費用は、次のとおりです。
【費用について】※2026年9月時点
| 処置 | 費用(税込) |
|---|---|
| 歯髄温存療法(VPT/覆髄治療・断髄治療) | 121,000円 |
| 精密根管治療 前歯 | 132,000円 |
| 精密根管治療 小臼歯 | 165,000円 |
| 精密根管治療 大臼歯 | 198,000円 |
いずれも自由診療のため健康保険は適用されず、費用は全額自己負担となります。
リスク・副作用:神経症状、術後疼痛、咬合痛、根尖病変、抜歯。
神経を残せないと判断された場合や、処置後に症状が出た場合には、改めて神経を取る治療が必要になることがあります。
精密根管治療を行った場合も、再治療が必要になることや、最終的に歯を残せないことがあります。最新の料金は料金表をご確認ください。
まとめ
神経を抜く必要がある状態は、不可逆性歯髄炎と歯髄壊死を中心に、学会のガイドラインで定められています。
「神経を抜くと脆くなる」という説明は広く流通していますが、実際に測った研究では、根管治療そのものによる歯のたわみにくさの低下は5%でした。一方、歯を削って両隣の縁を失うと63%まで落ちます。
歯を弱くしている主な要因は、削って失った量です。そして、神経を残せる条件には「無症状な歯髄」が含まれます。
痛みが強くなってからでは、選択肢が減ります。迷っている時間そのものが、選択肢を減らしていきます。まずは担当の歯科医師に、今の状態と残せる可能性を確認してください。
当院の考え方については歯をできるだけ長く残す治療および精密根管治療のページに記載しています。
監修者情報
濱本 靖也(はまもと やすなり)
HALO DENTAL CLINIC 院長/歯科医師
- 平成25年 朝日大学歯学部 卒業
- 大阪市内の歯科医院にて勤務
- 令和2年 HALO DENTAL CLINIC 開院
- 研修歴:歯周組織再生療法エムドゲイン認定コース修了/3i Implant認定コース修了/Nobel Biocare Implant 認定コース修了/SPI Implant 認定コース修了/Invisalign go 認定コース修了
所属学会:日本歯周病学会/日本歯内療法学会/日本口腔インプラント学会/日本臨床歯科医学会/大阪府歯科医師会
HALO DENTAL CLINIC(大阪市中央区道修町4-7-11 D-HB 3F / 淀屋橋駅13番出口 徒歩3分 / 肥後橋駅6番出口 徒歩4分)
【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の診断や治療方針を示すものではありません。歯の状態や適応は一人ひとり異なります。ご自身の状態については、必ず担当の歯科医師にご相談ください。自由診療の費用は税込表示であり、治療内容によって異なります。
参考文献
- Are endodontically treated teeth more brittle? – Sedgley CM, Messer HH. J Endod. 1992 Jul;18(7):332-5.
- Reduction in tooth stiffness as a result of endodontic and restorative procedures – Reeh ES, Messer HH, Douglas WH. J Endod. 1989 Nov;15(11):512-6.
- Periapical status of endodontically treated teeth in relation to the technical quality of the root filling and the coronal restoration – Ray HA, Trope M. Int Endod J. 1995;28(1):12-18.
- 歯内療法ガイドライン – 日本歯内療法学会
- 歯と歯ぐきと歯を支える骨の構造 – 日本歯科医師会「テーマパーク8020」
- Efficacy of pulpotomy for permanent teeth with carious pulp exposure: A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials – Li W, Yang B, Shi J. PLoS One. 2024;19(7):e0305218.
- Full pulpotomy versus root canal therapy in mature teeth with irreversible pulpitis: a randomized controlled trial – Zhu L, Liu W, Deng X, Chen Z, Chen J, Qian W. BMC Oral Health. 2024.
- Pulpotomy for irreversible pulpitis in mature permanent teeth: An overview of systematic reviews of randomized controlled trials – Chhabra A, et al. Science Progress. 2025;108(2).
