監修:歯科医師 濱本 靖也(HALO DENTAL CLINIC 院長)
根管治療後のズキズキがいつまで続くのか、先に結論をお伝えします。痛みは治療から24時間ごろがいちばん強く、1週間ほどで大きく引いていきます。
72の研究をまとめた分析では、治療から24時間後に痛みがあった人は40%、1週間後には11%まで減っていました。
痛みが出ること自体は、治療の失敗を意味しません。ただし、日数がたっても弱まらない、あるいは強くなる場合は別です。
この記事では、治療から何日目かとどんな症状かの2つで、様子を見るか歯科医院へ連絡するかを判断できるように整理します。
この記事でわかること
- 何日目で、どのくらいの痛みなら正常の範囲か
- 日数に関係なく、すぐ連絡したほうがよい症状
- 担当の歯科医師に伝えると話が早いこと
まず結論|痛みのピークは24時間ごろ、1週間で大きく引きます

根管治療の痛みについては、72の研究をまとめて分析した報告(Pak・White、2011年)があります。5,517本の論文から条件を満たす72件を選び、痛みの割合と強さを集計したものです。
| 時点 | 痛みがある人の割合 | 痛みの強さ(100点満点) |
|---|---|---|
| 治療を受ける前 | 81% | 54 |
| 治療から24時間後 | 40% | 24 |
| 治療から1週間後 | 11% | 5 |
ここから読み取れることは3つあります。
- 治療前のほうが痛かった人が圧倒的に多い(81%)。根管治療は痛みを減らす治療です。
- 24時間後にも4割の人に痛みが残る。 つまり治療翌日に痛むのは、めずらしいことではありません。
- 1週間後には1割程度まで下がる。 逆にいえば、1週間たっても痛む人がゼロになるわけではありません。
なお、これは海外で行われた研究をまとめたものです。日本の保険診療の実態そのものを示す数字ではありませんが、根管治療という処置の性質を知るうえでの目安になります。
大事なのは、日数そのものよりも「だんだん弱くなっているかどうか」です。昨日より今日、今日より明日と弱まっているなら、経過としては順調と考えられます。
神経を取ったのに、なぜ痛むのか
「神経を取ったのだから、もう痛くないはずでは」と思われるのは当然のことです。ここを理解しておくと、この後の話が一気に分かりやすくなります。

根管治療で神経を取っても歯の周りには神経が残っています
歯は、外側の硬い層と、その内側の空間からできています。日本歯科医師会の解説では、歯の構造について次のように説明されています。
歯の中央部には血管が侵入している「歯髄」があります。歯の本体は「象牙質」と呼ばれる組織です。
出典:歯と歯ぐきと歯を支える骨の構造(日本歯科医師会「テーマパーク8020」)
根管治療で取り除くのは、この歯髄(しずい)です。一般に「歯の神経」と呼ばれている部分です。ところが、歯を支えている周りの組織には、別の神経が通っています。
歯と骨のあいだには歯根膜(しこんまく)という薄い組織があり、ここには圧力や痛みを感じる神経があります。つまり、歯の内側の神経を取っても、歯の外側には感覚が残っています。
だから「噛むと痛い」が起きます
治療をした歯で噛むと痛む、という経験をされた方は多いはずです。これは歯根膜が感じ取っている痛みです。
治療で器具を出し入れした刺激や、根の先の周りに起きた炎症によって、歯根膜が敏感になっている状態です。
歯の内側の神経がないのに噛むと痛い、という現象は、この仕組みで説明がつきます。
「ズキズキ」は炎症のサインです
脈打つようにズキズキする痛みは、炎症が起きている場所に血液が集まっているときに感じやすいものです。
根管治療では、細い器具で根の中を掃除し、消毒の薬を使います。
この過程で、根の先の周りの組織にわずかな刺激が加わります。体はそれに反応して炎症を起こし、修復に向かいます。
ズキズキは、その反応が起きているあいだの感覚です。
根管治療後の痛みは何日目でどのくらいなら正常か
ご自身が治療から何日目かを確認して、当てはまる行をご覧ください。
| 治療からの日数 | よくある状態 | 目安となる対応 |
|---|---|---|
| 当日〜2日目 | 麻酔が切れてからズキズキする。噛むと響く。夜に強く感じる | 処方された鎮痛剤で対応。 痛みが強くても、この時期は多くの方が経験します |
| 3〜7日目 | 少しずつ弱まっている。噛んだときだけ違和感が残る | 経過を見てよい時期。 ただし弱まっていないなら次の受診で必ず伝えてください |
| 1〜2週間 | 鈍い違和感が残る/噛むと軽く痛む | 弱まる方向なら経過を見てよいことが多いです。変わらない・強くなるなら連絡を |
| 2週間以上 | 痛みが続く、または強くなっている | 歯科医院へ連絡してください。 治療の見直しが必要な場合があります |
同じ日数でも、「様子を見てよい」と「すぐ連絡すべき」の分かれ目は次のとおりです。
| 治療からの日数 | 様子を見てよい | すぐ連絡すべき |
|---|---|---|
| 当日〜2日目 | 処方された鎮痛剤で痛みをやり過ごせている | 薬がまったく効かない/激しい腫れ/発熱 |
| 3〜7日目 | 日ごとに明らかに楽になっている | 初日と同じかそれ以上に痛む/腫れが悪化 |
| 1〜2週間 | 鈍い違和感が残る程度まで弱まっている | 変わらない/強くなる/膿が出る |
| 2週間以上 | — | 痛みが続いている時点で連絡 |
この表はあくまで目安です。
歯の状態、感染がどこまで進んでいたか、根の形の複雑さによって経過は変わります。
日数の欄よりも大切なのは、「弱くなっているかどうか」です。
- 3日目でまだ痛むが、初日よりは明らかにましになっている → 経過として自然です
- 3日目で、初日と同じかそれ以上に痛い → 弱まっていません。連絡してください
夜に痛みが強くなるのはなぜか
「昼間は平気なのに、夜になるとズキズキする」「夜中に痛みで目が覚めた」という声は多く聞かれます。
はっきりした単一の原因が確定しているわけではありませんが、夜には痛みを強く感じやすい条件が重なります。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 姿勢 | 横になると、頭部にかかる血液の状態が立っているときと変わります。炎症のある場所では、それを痛みとして感じやすくなることがあります |
| 気を紛らわすものがない | 日中は仕事や会話に意識が向いています。静かな夜は、痛みそのものに注意が集中します |
| 鎮痛剤の間隔 | 夕方に飲んだ薬の効果が切れる時間帯と、就寝時刻が重なりやすくなります |
夜にできることとしては、次のような工夫があります。
- 枕を少し高くする(頭を下げすぎない)
- 痛むほうを下にして寝ない
- 冷やす場合は、頬の外から短時間だけ。 氷を直接当てたり、長時間冷やし続けたりしない
- 温めない。 入浴で長く温まると、痛みが強く感じられることがあります
痛みで一睡もできない、鎮痛剤を飲んでもまったく変わらないという場合は、翌朝いちばんに歯科医院へ連絡してください。
痛みの原因は、大きく3つに分けられます

原因を細かく数え上げた解説を見かけますが、痛みの最中に10個近い項目を読むのは大変です。ここでは3つに束ねます。
1. 治療そのものによる刺激(多くはこれです)
根の中を器具で掃除し、消毒の薬を使う。この過程で根の先の周りに刺激が加わります。
細菌や削りかすがわずかに根の外へ押し出されることもあります。この場合の痛みは、時間とともに弱まっていきます。
治療から数日で軽くなっていくのが典型です。
2. かみ合わせと仮蓋の高さによる痛み
治療の途中では、根管に仮の蓋をします。これを仮封(かふう)や仮蓋(かりぶた)といいます。この仮蓋がわずかに高いと、噛むたびにその歯だけに力が集中します。炎症のある歯に繰り返し力がかかるので、痛みが引きにくくなります。
「噛んだときだけ強く痛む」「上下の歯が当たる感じがおかしい」という場合は、この可能性を歯科医院に伝えてください。高さの調整は短時間で済むことが多い処置です。
3. 感染が残っている場合や別の問題がある場合
根管はとても細く、枝分かれしていることもあります。掃除しきれずに細菌が残ると、炎症が続きます。また、根にひびが入っている、器具が根の先を越えていた、といった場合にも痛みが長引くことがあります。
日本歯内療法学会の「歯内療法ガイドライン」は、根管治療で使う器具について次のように定めています。
根管内器具は時として破折することもある。
出典:歯内療法ガイドライン(日本歯内療法学会)
同じガイドラインには、そうしたことが起きた場合には患者へ説明することが望ましいという趣旨も定められています。つまりこれは、起こりうることとして想定され、説明されるべきこととして扱われています。
具体的には、次のようなことが痛みの原因になっていることがあります。
| 起こりうること | 内容 |
|---|---|
| 穿孔(せんこう) | 器具が根の壁を突き抜けてしまうこと。根の形が複雑な場合や、再治療で起こりやすいとされます |
| 器具の破折 | 細い器具が根の中で折れて残ること。上のガイドラインが想定しているのはこれです |
| 歯根破折(しこんはせつ) | 根そのものにひびが入る、または割れること。すでに歯が大きく失われている場合に起こりやすいとされます |
| 見落とされた根管 | 根管は枝分かれしていることがあり、清掃されていない管が残ると感染源になります |
これらはまれに起こることであって、ふつうに起きることではありません。ただ、「そういうことはない」と言い切るのも正確ではないので、挙げておきます。
こうした場合でも、気づいた時点で対応すれば選択肢は残ります。痛みが続くこと自体を心配しすぎるより、続いていることを伝えるほうが大切です。
根管治療後すぐに歯科医院へ連絡したほうがよい症状
次の症状がある場合は、治療から何日目かに関係なく連絡してください。
- 頬や歯ぐきが目に見えて腫れている
- 発熱している
- 痛みが日ごとに強くなっている
- 処方された鎮痛剤を飲んでも、まったく変わらない
- 口が開けにくい
- 膿のような味や、いやなにおいがする
- 仮の蓋が取れた、または欠けた
これらは、経過を見て解決する種類のものではありません。
夜間や休日の場合は、まず治療を受けた歯科医院の連絡先を確認してください。留守番電話に案内が入っていることがあります。
腫れが急速に広がる、発熱がある、息苦しさや飲み込みにくさがあるといった場合は、歯科の当番医や救急の窓口を利用してください。
お住まいの自治体や歯科医師会が休日の診療窓口を案内しています。
痛みを伝えるとき歯科医師に話すとよいこと
歯科医院に電話するとき、あるいは受診したとき、「痛いです」だけでは原因の絞り込みが進みません。次の4つを伝えるだけで、歯科医師が考える範囲がぐっと狭まります。
| 伝えること | 伝え方の例 | なぜ役に立つのか |
|---|---|---|
| いつから痛むか | 「治療の日の夜からです」「3日目から強くなりました」 | 治療直後からなのか、いったん治まって再燃したのかで、考える原因が変わります |
| どんな痛みか | 「脈打つようにズキズキします」「噛んだときだけズキッとします」 | 拍動する痛みと、噛んだときだけの痛みでは、原因の見当が違います |
| 何をすると痛むか | 「噛むと痛いです」「何もしなくても痛みます」「冷たいものでしみます」 | かみ合わせなのか、炎症なのかを分ける手がかりになります |
| 鎮痛剤は効くか | 「飲めば3時間くらいは楽になります」「飲んでも変わりません」 | 効かない場合は、対応を早める判断材料になります |
さらに、痛みの強さを数字で伝えると話が早くなります。
「いちばん痛かったときを10として、今は4くらいです」という言い方です。「治療が失敗したのではないですか」と切り出すより、この4つを伝えるほうが、結果的に早く原因にたどり着きます。
そして、まずは治療を受けた歯科医院に連絡してください。その歯の状態を実際に見て、レントゲンを撮っているのは、担当の歯科医師だからです。
根管治療後にやらないほうがよいこと
| 避けること | 理由 |
|---|---|
| 舌や指で治療した歯を触る | 刺激で痛みが強くなります。仮の蓋が取れる原因にもなります |
| 治療した側で噛む | 炎症のある歯に力がかかります。反対側で噛んでください |
| 硬いもの・粘り気の強いものを食べる | 仮の蓋が取れる、割れる原因になります |
| 長風呂・飲酒・激しい運動 | 血流が増えて痛みが強く感じられることがあります |
| 鎮痛剤を自己判断で増やす | 処方された用法・用量を守ってください。 効かない場合は増やすのではなく、歯科医院に連絡してください |
| 痛みを我慢して次回まで待つ | 早く伝えるほど、対応の選択肢が多く残ります |
根管治療後の歯みがきはどうすればよいか
治療した歯を避けて磨かないでください。
痛いからと磨かずにいると、そこに汚れがたまります。根管に細菌を入れないことが治療の要なので、口の中を清潔に保つことは治療の一部です。
- やわらかめの歯ブラシを使い、強くこすらない
- 治療した歯のまわりは、毛先をそっと当てて小さく動かす
- 仮の蓋の上は強く磨かない(取れる原因になります)
- 歯ぐきが腫れている部分は、痛みが出ない範囲で
なお、仮の蓋が取れた場合はできるだけ早く連絡してください。根管の中が唾液にさらされると、細菌が入り込みます。
日本歯内療法学会のガイドラインは、根管治療について次のように定めています。
全ての根管の清掃・形成・消毒・閉鎖は、常にラバーダム防湿下で無菌的処置下で行われるべきである。
出典:歯内療法ガイドライン(日本歯内療法学会)
治療のあいだ、根管に細菌を入れないことがどれだけ重視されているかが分かる記述です。仮の蓋も、その一部を担っています。
よくある質問
Q1. 治療の翌日に激痛がするのはなぜですか?
麻酔が切れたあと、治療で加わった刺激に体が反応して炎症が起きるためです。72研究の分析では、24時間後に痛みがあった人は40%でした。痛みが日を追って弱まっているなら、経過として自然な範囲です。
Q2. 痛みで眠れないのは異常ですか?
治療直後の1〜2日であれば、経験する方はいます。ただし、鎮痛剤を飲んでも変わらない、腫れや発熱を伴う、日ごとに強くなるという場合は連絡してください。
Q3. 冷やしてもいいですか?
頬の外から短時間冷やすのは差し支えありません。ただし氷を直接当てたり、長時間冷やし続けたりしないでください。温めることは、痛みを強く感じる原因になることがあります。
Q4. 痛み止めが効かないときはどうすればいいですか?
自己判断で量や回数を増やさず、歯科医院へ連絡してください。処方の変更や、原因への対応が必要な場合があります。
Q5. 痛みが出たのは、治療が失敗したということですか?
痛みが出ること自体は失敗を意味しません。72研究の分析でも、24時間後に4割の方に痛みが残っていました。判断の分かれ目は、痛みが弱まっているかどうかです。
まとめ
根管治療のあとの痛みは、24時間ごろがピークで、1週間ほどで大きく引きます。
判断の目安は日数そのものではなく、痛みが弱くなっているかどうかです。弱まっているなら経過として自然です。変わらない、強くなる、腫れや発熱を伴う場合は、日数に関係なく歯科医院へ連絡してください。
連絡するときは、「いつから」「どんな痛み」「何をすると痛む」「薬は効くか」の4つを伝えてください。それだけで話が早くなります。
当院の根管治療の考え方については精密根管治療、神経を残す治療については歯をできるだけ長く残す治療のページに記載しています。
監修者情報
濱本 靖也(はまもと やすなり)
HALO DENTAL CLINIC 院長/歯科医師
- 平成25年 朝日大学歯学部 卒業
- 大阪市内の歯科医院にて勤務
- 令和2年 HALO DENTAL CLINIC 開院
- 研修歴:歯周組織再生療法エムドゲイン認定コース修了/3i Implant認定コース修了/Nobel Biocare Implant 認定コース修了/SPI Implant 認定コース修了/Invisalign go 認定コース修了
所属学会:日本歯周病学会/日本歯内療法学会/日本口腔インプラント学会/日本臨床歯科医学会/大阪府歯科医師会
HALO DENTAL CLINIC(大阪市中央区道修町4-7-11 D-HB 3F / 淀屋橋駅13番出口 徒歩3分 / 肥後橋駅6番出口 徒歩4分)
【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の診断や治療方針を示すものではありません。症状や経過は一人ひとり異なります。ご自身の状態については、必ず治療を受けた歯科医院にご相談ください。
