監修:歯科医師 濱本 靖也(HALO DENTAL CLINIC 院長)

歯の神経を抜く治療の痛さについて、先に結論をお伝えします。

麻酔が効いていれば、治療中の強い痛みは抑えられます。ただし、「必ず効きます」とは言えません。72の研究をまとめた分析では、根管治療の際に追加の麻酔が必要だった人が60%いました。

これは失敗が多いという意味ではなく、効きにくいときには追加すれば対応できるということです。「痛くありません」とだけ書かれた記事を読んでも、不安は消えないはずです。

この記事では、効かない場合まで含めて、実際に何が起きるのかをお伝えします。

この記事でわかること

  1. 治療中・治療後の痛みの実際(数値つき)
  2. 麻酔が効きにくいときに何が行われるか
  3. そもそも抜かずに済む場合があるか

先に知っておいてほしいこと|治療前のほうが痛い人が多い

先に知っておいてほしいこと|治療前のほうが痛い人が多い

不安のなかで見落とされやすいのですが、根管治療は痛みを取り除くための治療です。

72の研究をまとめて分析した報告(Pak・White、2011年)では、痛みの割合が次のように変化していました。

時点 痛みがある人の割合 痛みの強さ(100点満点)
治療を受ける前 81% 54
治療から24時間後 40% 24
治療から1週間後 11% 5

出典:Pak JG, White SN. Pain prevalence and severity before, during, and after root canal treatment: a systematic review. J Endod. 2011;37(4):429-38.

治療を受ける前がいちばん痛い人が多く(81%)、痛みも強い(100点中54)という結果です。

今まさに痛みがあって受診された方にとって、この数字は実感に近いはずです。治療は、その痛みを取りに行くための処置です。

なお、これは海外で行われた研究をまとめたものであり、日本の保険診療の実態をそのまま示すものではありません。ただし、根管治療という処置の性質を知るうえでの目安になります。

治療中の痛み|麻酔が効いているあいだに感じるもの

「痛み」と「圧迫感・振動」は別のものです

麻酔が効いている状態でも、何も感じなくなるわけではありません。麻酔が抑えるのは主に痛みの感覚です。押される感じ、振動、器具が当たっている感覚は残ります。

この違いを知らないまま治療を受けると、「押される感じ」を「痛みが始まった」と受け取ってしまい、緊張が高まります。緊張すると体はこわばり、痛みをより強く感じやすくなります。

感じるもの 麻酔が効いているとき
鋭い痛み・しみる感覚 抑えられます
押される感じ・圧迫感 残ります
振動・器具が当たる感覚 残ります
音 聞こえます

「これは痛みではなく圧迫感だ」と分かっているだけで、受け止め方はかなり変わります。

器具の音は痛みとは関係ありません

治療中は「ピピピ」という電子音や、削る音が聞こえます。これらは装置が動いている音であり、痛みの合図ではありません。

治療中に聞こえる音の正体については、別の記事で詳しく扱います。

麻酔の注射そのものは痛いのか

「治療より、麻酔の注射のほうが怖い」という方は少なくありません。

子どものころの記憶が残っている場合はなおさらです。注射の痛みを抑えるために、一般的に次のような工夫が行われています。

工夫 何をしているか
表面麻酔 注射の前に、歯ぐきの表面にジェル状の麻酔薬を置いて感覚を鈍らせます。針が刺さる瞬間の痛みが軽くなります
細い針を使う 針が細いほど、刺入時の刺激が小さくなります
ゆっくり一定の速度で注入する 薬液が急に入ると組織が押し広げられ、それが痛みになります。ゆっくり入れることで軽減できます
薬液の温度を体温に近づける 冷たい薬液が入ると刺激になります。温めた状態で使うことがあります
刺す場所を選ぶ 粘膜のやわらかい部分から入るほうが、痛みが少なくなります

これらは特別な処置ではなく、多くの歯科医院で行われている工夫です。注射が苦手であることは、事前に伝えてください。

伝えておけば、表面麻酔の時間を長めに取る、声をかけながら進めるといった配慮ができます。

「麻酔なしで治療されるのでは」という不安について

「歯の神経 抜く 麻酔なし」という言葉で検索されている方がいます。

神経を取る処置では、麻酔を用いるのが基本です。生きている歯髄(歯の神経)には感覚があるため、麻酔なしでは処置が成り立ちません。

ただし、すでに神経が死んでいる歯の場合は、麻酔を使わずに処置を進めることがあります。感覚がない状態だからです。

この場合でも、根の先の周りには感覚が残っているため、状況によっては麻酔を使います。どちらになるのかは、事前に確認できます。「今日は麻酔をしますか」と聞いて構いません。

麻酔が効きにくいことは、実際にあります

痛みの話をするうえで、ここは避けて通れません。

追加の麻酔が必要だった人は60%

先ほどの72研究の分析では、追加の麻酔について次のように報告されています。

出典:Pak JG, White SN. J Endod. 2011;37(4):429-38.

追加の注射がしばしば必要だった(60%、標準偏差24)と記されています。つまり、最初の麻酔だけで完了しなかった人が、およそ6割いたということになります。

この数字を見て不安になるかもしれません。ただ、読み方を変えてください。これは「麻酔が効かないまま治療された人が6割いた」という意味ではありません。

効きが足りないと分かったときに追加され、対応されたということです。追加は失敗ではなく、通常の手順の一部です。

「麻酔は効きます」と書いてある記事を読んだあとで実際に効きにくかった場合、「自分だけおかしいのでは」と感じてしまいます。そうではありません。

麻酔が効きにくくなる条件

麻酔が効きにくくなる状況として、次のようなことが挙げられます。

  • 炎症が強いとき。 強い痛みが続いている歯では、麻酔が効きにくくなると説明されています
  • 下あごの奥歯であるとき。 下あごの奥歯は周囲の骨が厚く、麻酔薬が届きにくいとされています
  • 緊張が強いとき。 体がこわばると、痛みを感じやすくなります

なお、こうした条件と効きにくさの関係については、臨床の場で広く説明されている内容ではありますが、この記事では機序の断定は避けます。気になる場合は、担当の歯科医師に直接お尋ねください。

重要なのは、こうした条件があると分かっているからこそ、歯科医師は最初の麻酔で終わりにせず、効き具合を確認しながら進めるということです。

麻酔が効かなかったときに行われること

麻酔が効かなかったときに行われること

麻酔が足りないと分かった場合、次のような対応が取られます。

対応 内容
追加する 同じ方法でもう一度、量を足します。最も一般的な対応です
方法を変える 歯ぐきに注射する方法(浸潤麻酔)で足りない場合、神経の大もとに効かせる方法(伝達麻酔)や、歯と骨のあいだに直接効かせる方法など、別の手技に切り替えます
時間を置く 効くまで数分待ってから再確認します
日を改める 炎症が強すぎる場合、まず炎症を抑える処置や投薬を行い、後日あらためて処置することがあります
鎮静法を検討する 恐怖心が強い場合、点滴でうとうとした状態にする方法(静脈内鎮静法)を用いる医院もあります。自由診療となる場合があり、費用や適応は事前の確認が必要です

痛いときはその場で伝えるのがいちばん確実です

痛みを感じたら、その場で伝えてください。

治療中は口を開けているので声が出しにくく、我慢してしまう方が多くいます。しかし、黙っていると、術者は麻酔が効いていると判断してそのまま進めます。

処置の前に、「痛かったら、右手を上げます」と決めておいてください。手を挙げれば処置は止まります。多くの歯科医院では、治療前にこの合図を確認します。

確認がなかった場合は、自分から「痛かったら手を挙げます」と言っておいて構いません。

我慢しても治療は早く終わりません。むしろ体がこわばり、時間がかかります。

治療後の痛み|いつまで続くか

麻酔が切れたあと、痛みや違和感が出ることがあります。先ほどの72研究の分析では、治療から24時間後に痛みがあった人は40%、1週間後は11%でした。

痛みの強さは、100点満点で24(24時間後)から5(1週間後)へと下がっています。治療の翌日に痛むのは、めずらしいことではありません。見るべきなのは経過した日数ではなく、痛みの向きです。日ごとに弱まっているなら、経過として自然です。

変わらない、強くなる、腫れや発熱を伴うという場合は、歯科医院へ連絡してください。治療後の痛みについては、別の記事で日数ごとの目安と受診の判断基準を詳しく扱っています。

神経を抜いた治療後にやらないほうがよいこと

治療を終えた歯は、しばらく敏感な状態になります。痛みが出ていないか確かめたくなりますが、そこを触らないでください。

避けること 理由
指や舌で押す、爪や歯ブラシの柄で叩く 確かめるつもりの刺激が、痛みを長引かせる原因になります
治療した側で噛む 炎症のある歯に力がかかります。反対側で噛んでください
硬いもの・粘り気の強いものを食べる 仮の蓋が取れる、欠ける原因になります
長風呂・飲酒・激しい運動 血流が増えて痛みを強く感じることがあります

痛み止めを飲むタイミング

麻酔が切れてから飲むより、切れる前に飲んでおくほうが効きやすいと説明されることがあります。麻酔は治療後2〜3時間ほどで効果が薄れてくることが多いためです。

ただし、飲むタイミングと回数は、処方時の指示に従ってください。この記事で薬の名前や量をお伝えすることはできません。「いつ飲めばいいですか」は、その場で聞いておくと確実です。

抜歯と神経を抜くのは、どちらが痛いのか

「歯を抜くのと神経を抜くのは、どちらが痛いですか」という質問をよくいただきます。どちらも麻酔をして行う処置なので、痛みの大小を比べることにはあまり意味がありません。

感じ方には個人差があり、歯の状態や部位によっても変わります。比べるべきなのは、痛みではなく目的です。

神経を取る治療(根管治療) 抜歯
目的 歯を残す 歯を取り除く
治療後 自分の歯が残り、被せ物などで機能を回復する 失った部分を補う処置が別に必要になる
通院 複数回になることが多い 抜歯自体は1回、その後の処置は別

神経を取る治療は、歯を残すために行うものです。痛みを避けたいという理由だけで抜歯を選ぶのは、長い目で見たときに損になることがあります。

そもそも歯の神経を抜かずに済む場合はあるのか

「本当に抜くしかないのか」という疑問は、当然のものです。

神経を抜くと判断される2つの状態

日本歯内療法学会の「歯内療法ガイドライン」は、永久歯で神経を取る治療(非外科的歯内療法)が適応となる条件を挙げています。その最初の2つは次のとおりです。

1)不可逆性歯髄炎。

2)根尖病変の有無にかかわらず、歯髄壊死。

出典:歯内療法ガイドライン(日本歯内療法学会)

不可逆性歯髄炎とは、歯の神経の炎症が元に戻らない段階まで進んだ状態です。

何もしなくてもズキズキする、温かいもので強く痛む、といった症状が出ます。

「元に戻らない」というのは、原因になっている虫歯を取り除いても、神経がもう回復しないという意味です。

炎症が軽い段階なら、虫歯を取り除けば落ち着くことがあります。

しかし進んでしまうと、その歯の神経は自力では元に戻りません。

この段階でそのままにすると、痛みは強くなるか、あるいは神経が死んで痛みが消えるかのどちらかに向かいます。

歯髄壊死は、神経が死んでしまった状態です。

この段階では痛みを感じなくなることがあります。

治ったように感じますが、痛みを感じる組織が働かなくなっただけです。

放置すると、根の先の周りに炎症が広がっていきます。

この2つに当てはまる場合、神経を残すことは難しくなります。

歯の神経を残せる場合の条件

一方で、条件を満たす場合には神経を残す治療(歯髄温存療法)が選択肢になります。

同じガイドラインは、露出した神経を保護する処置(直接覆髄)について、次の条件を挙げています。

1)臨床的に生活歯髄で無症状な歯髄が露髄した場合。

2)露髄面にて出血がコントロールされている。

3)露髄面で覆髄材を歯髄組織に直接接触できる。

4)露髄面での細菌汚染が最小限である

5)適切な歯冠側の封鎖が維持される。

出典:歯内療法ガイドライン(日本歯内療法学会)

注目していただきたいのは、「無症状な歯髄」という条件です。

つまり、痛みの強さが、そのまま選択肢の広さに効いてきます。何もしなくてもズキズキするところまで来ていれば、この条件からは外れます。逆に、しみるだけ・噛んだときだけという段階なら、まだ可能性は残っています。

なお同じガイドラインは、この処置について患者への説明が必要であることも定めています。うまくいかなかった場合には改めて神経を取る治療が必要になる、という説明です。「残す治療をすれば必ず残せる」わけではありません。

残す処置にも、痛みの少ない選択肢があります

歯髄温存療法(VPT)と呼ばれる処置には、覆髄治療(歯髄を取り除かずに上から覆う)と、断髄治療(歯髄の上部だけを取り除き、根の中の歯髄を残す)があります。

当院はどちらも行いますが、選べるかどうかは痛みの強さではなく、感染がどこまで及んでいるかで決まります。

上のほうだけで止まっていると判断できたときに、断髄治療が候補に入ります。痛みという観点では、参考になる報告があります。

根管治療と断髄を直接比べたランダム化比較試験(成熟臼歯160例)では、1年後の成功率に差はなかった一方で、術後1日目の痛みは断髄のほうが軽かったと報告されています。

出典:Zhu L, et al. BMC Oral Health. 2024.

ただし、これは1つの試験の結果です。断髄については追跡期間が1〜2年と短く、2025年の総括的な報告は「慎重に選んだ症例に限って検討されるべき」としています。

出典:Chhabra A, et al. Science Progress. 2025;108(2).

「痛みが少ないから断髄を選ぶ」という決め方はしません。選べるかどうかは、あくまで歯髄の状態で決まります。

残せないと判断された場合や、処置のあとに症状が出た場合は、改めて神経を取る治療に切り替えます。

どの処置になるかは、診察して歯髄の状態を確かめたうえでお伝えします。抜くかどうかの判断そのものについては、「歯をできるだけ長く残す治療」で詳しく扱っています。

神経を抜く治療の当日にできる準備

準備 理由
早めに受診する 炎症が強くなるほど麻酔は効きにくくなるとされています。痛みが激しくなる前のほうが有利です
前日はよく眠る 睡眠不足や疲労があると、痛みを感じやすくなります
食事を済ませておく 治療後は麻酔が切れるまで食事を控えることになります
不安が強いことを伝える 表面麻酔を長めに取る、声をかけながら進めるなどの配慮ができます
服用中の薬とアレルギーを伝える 麻酔薬の選択に関わります。お薬手帳を持参すると確実です
予定を詰めすぎない 治療後に違和感が出ることがあります。重要な予定の直前は避けたほうが安心です

よくある質問

Q1. 麻酔が効かなかったら、そのまま治療されるのですか?

いいえ。効きが足りない場合は追加します。72研究の分析では、追加の麻酔が必要だった人が60%でした。追加は通常の手順の一部です。痛みを感じたら合図してください。

Q2. 麻酔の注射が苦手です。何か対応してもらえますか?

表面麻酔を先に使う、細い針を使う、ゆっくり注入するといった工夫があります。苦手であることを事前に伝えていただければ、時間の取り方を含めて配慮できます。

Q3. 治療は何回くらい通いますか?

歯の状態、根管の本数、感染の程度によって変わります。数回で終わることもあれば、それ以上かかることもあります。初回の説明時に見通しを確認してください。

Q4. 歯を抜くのと神経を抜くのでは、どちらが痛いですか?

どちらも麻酔をして行うため、単純な比較は難しいものです。目的が異なり、神経を取る治療は歯を残すために行います。

Q5. 痛みを我慢したほうが早く終わりますか?

いいえ。我慢しても治療は早くなりません。むしろ体がこわばり、時間がかかることがあります。痛みは伝えてください。

費用について

【費用について】※2026年9月時点

処置 費用(税込)
歯髄温存療法(VPT/覆髄治療・断髄治療) 121,000円
精密根管治療 前歯 132,000円
精密根管治療 小臼歯 165,000円
精密根管治療 大臼歯 198,000円

いずれも自由診療のため健康保険は適用されず、費用は全額自己負担となります。なお、保険診療で行う根管治療もあります。どちらになるかは診察のうえでご説明します。

リスク・副作用:神経症状、術後疼痛、咬合痛、根尖病変、抜歯。

神経を残せないと判断された場合や、処置後に症状が出た場合には、改めて神経を取る治療が必要になることがあります。最新の料金は料金表をご確認ください。

まとめ

麻酔が効いていれば、治療中の強い痛みは抑えられます。ただし「必ず効く」とは言えません。72研究の分析では、追加の麻酔が必要だった人が60%いました。

効きにくいことは起こりうることであり、そのときは追加や方法の変更で対応されます。

いちばん確実な対処は、痛みを感じたときにその場で伝えることです。処置の前に「痛かったら手を挙げます」と決めておいてください。当院の根管治療の考え方については精密根管治療のページに記載しています。

監修者情報

濱本 靖也(はまもと やすなり) HALO DENTAL CLINIC 院長/歯科医師

濱本 靖也(はまもと やすなり)

HALO DENTAL CLINIC 院長/歯科医師

  • 平成25年 朝日大学歯学部 卒業
  • 大阪市内の歯科医院にて勤務
  • 令和2年 HALO DENTAL CLINIC 開院
  • 研修歴:歯周組織再生療法エムドゲイン認定コース修了/3i Implant認定コース修了/Nobel Biocare Implant 認定コース修了/SPI Implant 認定コース修了/Invisalign go 認定コース修了

所属学会:日本歯周病学会/日本歯内療法学会/日本口腔インプラント学会/日本臨床歯科医学会/大阪府歯科医師会

HALO DENTAL CLINIC(大阪市中央区道修町4-7-11 D-HB 3F / 淀屋橋駅13番出口 徒歩3分 / 肥後橋駅6番出口 徒歩4分)

【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の診断や治療方針を示すものではありません。痛みの感じ方や治療の適応は一人ひとり異なります。ご自身の状態については、必ず担当の歯科医師にご相談ください。自由診療の費用は税込表示であり、治療内容によって異なります。

参考文献